大正から昭和初期に活躍した挿絵画家とのこと。恥ずかしながら初めて知った。
たまたま近場の美術展で開催されていたこと、たまたま奥様が大正時代を舞台にした小説にはまっていたことから足を運んだ。
和服がまだ一般的な時代に、華麗な洋服に身を包んだ細身の女性たち。目はぱっちりだがどこか物思いに沈んでいるような表情が、モノクロの緻密な線描で現される。奥様曰く「物語が伝わってくる」。令女界という女学生向けの雑誌で大人気だったとか。この抒情的な雰囲気にうっとりする気持ちは中年おじさんにもわからんでもない、気はする。蕗谷虹児の生い立ちはまた複雑で、父母は駆け落ち婚。幼少期は貧しく、父の酒乱に手を焼き、母は若くして亡くなる。虹児は生前、何度も自伝を描いているそうだが、書かずにはいられない何かこだわりが、幼少期にあったのだろうな、などと思った。読んでないからわからんけどね。
午後は隣にある平塚市博物館にも行ってみた。こちらはこちらでなかなか楽しめたが、館外にある「箱根の神代杉」というのがすごかった。これだ。
脇にあった説明書きをそのまま引用する。
箱根の神代杉
産地 箱根町仙石原終末処理場
地層 神山山崩れ堆積物
時代 3100年前(樹齢700年)神山山崩れは早川をせき止めて芦ノ湖を出現させた大規模な崩壊です。神代杉はこの地層中に数多く産出しており、芦ノ湖の生い立ちを物語るものです。
一瞬時系列がわからなくなる。多分こういうことだな。
- 3800年前 杉、生まれる
- 3100年前 神山で大規模山崩れ、早川をせき止め芦ノ湖になる。一緒に杉(この時点で樹齢700年)が埋まる。
よく見るとこの樹木の表面は半透明の鉱物?で覆われている。ミスドのドーナツにコーティングされている固いシロップみたいな。ともかく、ものすごい時間をかけてこの形になったことがわかる。まさに神さま達の時代の杉、だろう。
これってすごい貴重な物なんじゃないかと思ったけど、駐車場脇の植え込みの横あたりに突然ぼこっとおいてある。(一応、一軒家の駐車場のような屋根がついている)。ちょっと不思議な空間であった。