課長風月

疲れたサラリーマンの憩いのひと時

蕨市:河鍋暁斎記念美術館に行く

先日、河鍋暁斎の娘、暁翠が主人公の澤田瞳子さんの小説、「星落ちて、なお」を読み終えた。とっても良い小説だった。

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そして先週の日曜日、前から気になっていた「河鍋暁斎記念美術館」に行ってみた。場所は埼玉県蕨市。横浜住まいの私には少々遠いが、やはり記憶に新しい今のうちに行っておきたいのである。

 

上野東京ライン上野駅まで出た後、京浜東北線西川口駅で降りる。地図で見たところ、蕨駅よりは西川口駅の方が近い。蕨駅からならコミュニティバスが出ているようだが、せっかく初めて訪れる場所なので、散歩がてら20分ほどポテポテと歩いていくことにした。この日は幾分寒さも和らいでいたし、坂の多い横浜市とは違って道も平坦で歩きやすい。

 

のんびり歩いていたら、なんだかんだと11時くらいになってしまったので、美術館に行く前に早めの昼食をとることにする。河鍋暁斎記念美術館のすぐ近くにある蕎麦屋の「満留賀」で、穴子天ぷらそばを頼む。ここのそばは太麺で、しっかりとした噛み応え。天ぷらもさっくりうまい。

 

さて、いよいよ河鍋暁斎記念美術館に到着。住宅街の真ん中にある、閑静な美術館である。

 

暁斎と暁翠の自宅は東京の根岸にあったはずで、なぜ蕨市に?と思ったが、河鍋家は暁斎の孫の代に赤羽に転居し、その後第二次世界大戦の強制疎開で蕨に引っ越してきたそうだ。現在の記念美術館は、その時の自宅を改装したもののようだ。

 

入口。暁斎の代表作の一つ「文読む美人」の顔だしパネルがある。少し逡巡したが、今日は一人だし、自撮りも難しそうだ。何より恥ずかしい。辞めておこう。

 

さて、館内は撮影不可のためここからは文字のみとなる。中に入ると職員の方に声を掛けられ、600円のチケットを購入する。現金のみなので注意が必要。

 

現在の企画展は「暁斎・暁翠 福寿の魁」展と題して、新年にふさわしい神や縁起の良い画題を選んでいるそうだ。まあ、もう2月半ばなのだが、年初に始まった展示で、原則二か月単位で展示替えを行う方針らしい。

 

展示は三室に分かれている。

 

第一展示室は、窓のない部屋で結構暗い。日本画の画材は光に弱いためわざとそうしているようだが、少し見づらい。部屋の入口には裸電球が吊るされており、室内のメインの照明も年代物の蛍光灯、昭和の頃を思い出し少し懐かしい気分になる。最近は都内のモダンな建物の美術館ばかり行っていたが、こういうのも趣があっていいな。

 

作品としては「暁斎醉画」の「大黒天と福禄寿」というのが面白かった。元ネタは大津絵にある「外法の梯子剃り」というものらしく、大黒様が頭の長い福禄寿に梯子をかけて髪を剃ってあげるという楽しい絵。こちらに大津絵のイメージがあった。

www.otsue.jp

一方、暁斎の絵の方は、大黒様は福禄寿の頭に登って、梅の枝を折ろうとしているようで福禄寿が釈然としない顔をしているというものだ。もともと滑稽な絵をさらに捻って面白くしている。

 

あと、この部屋には本展覧会で一作のみの河鍋暁雲の作品「鐘馗」が展示されていた。「星落ちて、なお」にも登場していた憎たらしい兄である。そう思うと親しみが沸く。

 

第二展示室は一点明るい部屋。本展示は七福神を描いたものがかなりの数を占めるが、暁斎は干支にちなんだ七福神を描くのが恒例となっており、暁斎の死後に娘の暁翠が引きついたということだ。今回は以下5点が展示されていた。暁斎の戌・丑、暁翠の卯・巳・申である。(ネット上で見られるサイトへのリンクもつけておく)

 

1886年 新板七福神八犬伝之図(しんぱんしちふくじんはっけんでんのず) 暁斎

1889年 新板七福神市原野見丑(いちはらのにうしをみる)図  暁斎

1891年 卯歳七福神豊年踊 暁翠作

1893年 巳年福神遊(みどしのふくじんのあそび) 暁翠作

1896年 七福神丙申宝船之図 暁翠作

 

どれも七福神が干支にちなんで大騒ぎをしているおめでたく楽しい絵なのだが、暁斎と暁翠の絵をじっくり見比べてみると素人目にもやはり作風の違いはわかる。

暁斎の絵は荒々しく躍動感があり、暁翠の絵は端正だ。

「星落ちて、なお」で暁翠(とよ)はとても真面目な女性として描かれるが、こういった画風を見て人物造形をしたのかな、などと想像した。まあ、私が小説を先に読んでいるので色眼鏡で絵を観ている可能性もあるが。

 

あと、この部屋には澤田瞳子さんのインタビュー記事のスクラップなどの資料もおいてある。私のように小説から入ったファンも多いのだろうな。

 

第三室は、暁斎の絵日記が中心の展示となっている。暁翠(とよ)をはじめとして、小説で出てくる暁斎の家族や弟子たちが絵日記に出てくるので、これまたとても楽しめる展示だ。

 

ミュージアムショップではこの本を買ってみた。カラーで暁斎、暁翠の作品が両方楽しめる。今回展示されていた七福神をなどの作品もいくつか含まれていた。

 

まあ、一言でいえば楽しかった。小説読んですぐ行ってよかったな。もう一度小説も読み返したくなった。

 

実はこの後、蕨市の歴史民俗資料館にも寄っていてそっちもとても楽しかったのだが、長くなりすぎたので別エントリで書く。