課長風月

疲れたサラリーマンの憩いのひと時

読書「すみだ川・新橋夜話 他一編」永井荷風

たまには明治の文学でも読むか、と手に取った一冊。初めての永井荷風。ちょっと読むのに時間がかかったけど、なかなか面白かった。

 

本書は短編集であり、「深川の唄」、「すみだ川」と「新橋夜話」で構成される。「新橋夜話」は12本の短編集なので、全部で14本の短編が入っていることになる。

 

冒頭の「深川の唄」は、なんとなく著者を思わせる「私」が、電車に乗って消えゆく江戸情緒を儚み、明治当世の乗客と車窓から見える景色に悉く毒づいて回るという話である笑。四谷見附に始まり、半蔵門三宅坂桜田門日比谷公園、数寄屋町と通り、茅場町で乗り換えて深川へ向かう。こちらの「明治39年の東京の路面電車路線図をつくる」というページを見ながら読むと、位置関係が分かりやすく楽しめる。

http://f-makuramoto.com/43-syakaika/39rosen.html

当時の荷風から見ると、急拵えで美観を全く無視して発展に邁進する世の中が憎らしくてしょうがなかったのだろうが、現代から見ると当時の風俗文化もまた趣があるように感じてしまう。

 

「すみだ川」は、幼馴染の女の子が芸者になってしまうことに悶々とする男子学生・長吉の話である。長吉はまた、息子の立身出世を夢見て一流大学に進学させるために血道をあげる母の期待を裏切り、芸能の道に進むことを夢見て学校をこっそりズル休みしたりする、ちょっと困った青年なのである。現代ではそれほど珍しくない人物造形だが、明治期といえば富国強兵、殖産興業の時代であり、正反対の価値観を持った主人公を立てるのもまた荷風の明治期への反発なのかなと思った。

 

「新橋夜話」は、新橋の花街を舞台にした短編集。皮肉の効いたユーモラスな話からしっとりした恋愛話までバリエーションに富んでいて楽しめる。「浅瀬」や「見果てぬ夢」といった作品では、花柳界での放蕩に対する、おそらく荷風自身のものと思われる考え方を登場人物に語らせる形で披露しているが、平凡な勤め人が変に傾倒したりすると間違いなく身を滅ぼす内容なので注意した方が良いと思った。笑。

 

なお、全般的に耳慣れない言葉が多く、読むのにそこそこ骨が折れた。私はなるべく逐一ネットで調べ、イメージがわかない場合は画像検索も使って読むようにした。読書スピードは当然落ちるが、何も調べないで読むと、わからない言葉だらけで情景が何一つ頭に入ってこないからである。ストーリーを楽しむというよりは、当時の花街や東京の描写を味わう小説だと思うので、このやり方は正解だったかなと思っている。

 

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