課長風月

疲れたサラリーマンの憩いのひと時

読書「でぃすぺる」今村昌弘

「屍人荘の殺人」シリーズの今村昌弘さんによる、小学生が主人公の怪談ミステリー。とっても面白かった。

かつて鉱山開発で栄えたものの、今は衰退の途上にある田舎の街、奥郷町。そこに住む木島悠介は、オカルトが大好きな小学六年生。掲示係に立候補し、壁新聞でオカルト記事を発表してクラスの注目を浴びたいと考えていた。しかし、なぜかクラス一の優等生波多野沙月も掲示係に立候補する。従妹である波多野真理子の不可解な死と、彼女が残した6つの怪談についての見解を、オカルトに詳しい雄介に聞きたかったのだと言う。クラス一目立たない女子・畑美奈も加え、小学生三人による怪談の謎と、真理子の殺人事件の調査が始まった。

 

今村昌弘さんの作品を読むのはこれが5冊目で、現時点で出版されている単著はすべて読んだことになる。まあ、一言でいって好きなのである。

 

一番好きなポイントは、月並みな言い方になるが「肩の凝らない楽しい作品」だということだ。基本はミステリーで人もそれなりに死ぬし、恐怖感もある。しかし、根底には明るさがあり読み終わった後であまりイヤな気持ちになることがない。そのため、読むことに抵抗感が一切ない。読む前に「楽しみだなぁ」で始まり、読み終わって「あー、面白かった」で終わる、そんな印象なのである。

 

さて、本作「でぃすぺる」は怪談を扱った小説である。全部で六本の怪談が作中作として出てくるが、これが意外なほど不気味で、しっかりと怖さを感じる。この怪談は、殺された真理子のPCから出てきたもので、かつ何を意図してこれを残したのかわからないことが怖さを増幅している。また、怪談の内容自体も具体的に書かれているように見えて、絶妙に不自然な謎を紛れ込ませており、そこがなんとも不気味なのである。小説の怪談話で怖がらせるのは結構難しいと思うのだが、本作は充分成功していると思う。

 

小学校生活の描き方も、自分には興味深い。掲示係が作る壁新聞という昔懐かしいキーワードと、スマホやユーチューバーなどの現代的なモノたちが混在しているところが妙に新鮮に感じる。私自身は子供がおらず、これがどの程度リアルな現代の学校生活なのかはちょっとわからないが、昔と変わらないところと変わったところがあるのが面白い。また、小学生ならではの微妙な人間関係の難しさのようなものも描かれている。少々胸が痛くなるところもあるが、やはり根底は明るい作風なので、同じ小学生が主人公のミステリ小説でも道尾秀介さんの作品のような陰鬱な感じにはならないのである。

 

ただ、ラストで明かされる真相については、斬新ではあるものの、若干の駆け足感というか、丁寧さに欠けるところがあるように思えた。あと、動機がどうも不自然に思えてしまうのもマイナスポイントだった。

 

とはいえ、怪談の謎、真理子の殺人事件の謎、そして小学生3人のドラマに引っ張られ、真相にたどりつくまで飽きずに楽しく読み続けることができたことは間違いない。やっぱり今村さんの小説は面白いと思う。

 

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