課長風月

疲れたサラリーマンの憩いのひと時

読書「恐怖を失った男」M・W・クレイヴン

M・W・クレイヴン氏によるハードボイルド・アクション小説・・・とでも言おうか。700ページ近い大著だが、面白かった。同著者のワシントン・ポーシリーズとはまた違った魅力を持つ作品である。

元連邦保安局の特殊作戦群(SOG)指揮官だったベンジャミン・ケーニグは六年前に突如失踪。その後身を隠し、浮浪者同然の生活を送っていたが、ある日重要指名手配犯として拘束されてしまう。護送された先には、元上司であるミッチェル・バリッジがいた。そしてケーニグに、誘拐された娘の捜索を依頼するのだった。

 

M・W・クレイヴンのワシントン・ポーシリーズは最近夢中になって読んでいる海外ミステリである。既に4作目まで読了しており、翻訳済みの作品で残っているのは5作目の「ボタニストの殺人」のみである。「ボタニストの殺人」は購入済みで積んであるのだが、奥様が、本書を図書館で借りてきたため、先にこっちを読むことにしたのである。

 

ワシントン・ポーは英国の「国家犯罪対策庁(NCA)重大犯罪分析課(SCAS)」の所属であり、主な役目は犯人のプロファイリングを行って特定することであった。そのため、ワシントン・ポーシリーズは必然的にミステリ色が強い作品となり、誰が犯人か?どうやってやったのか?動機は何か?といったところが興味の焦点となる作品であった。

 

一方、本書の主人公ケーニグが勤めていた連邦保安局というのは、アメリカで「法執行」を行う機関らしい。要するに容疑者を逮捕したり護送したりする役割である。つまり、ポーのような刑事が容疑者を特定した後の仕事を担うのである。そこの特殊作戦群ということなので、凶悪犯の逮捕が主な役目だろう。当然ながら高い戦闘能力が求められる。

 

そのためか、本書ももちろんミステリ的な要素もあるのだが、そこは比較的あっさりしており、重点が置かれているのは戦闘アクションの方だと思う。銃撃戦あり、格闘戦ありで結構派手にやってくれる。

 

しかし、ただ派手にドンパチやってスカッとするような作品ではなく、そこで展開されるアクションはかなりの頭脳戦である。主人公ケーニグはかなり博識で、武器や人間の体の造りなど知識を総動員して作戦を立てる。敵と互角の戦いを繰り広げているようでは、それはそもそもの作戦の失敗だと言うのである。

 

そして、タイトルになっているように、ケーニグは過去に頭部に負った損傷により、恐怖を感じることができなくなっている。この性質は弱点でもあるが、うまく使えば戦いを有利に進める長所にもなる。普通の人間ならできないような、「恐怖を失った」からこそできる突飛な作戦で敵の裏をかく。そこが本書の一番の醍醐味だと思った。

 

そういう意味で、ワシントン・ポーシリーズとはまた違った魅力の作品であった。しかし、ケーニグの食べ物の好みはポーと似通っていて、しょっぱいベーコンが好きらしい。このあたりは、クレイヴン氏の好みそのままなのかもしれない。

 

ケーニグが主人公の作品で翻訳されているのは一作のみだが、Wikipediaを見ると続編も出ているようなので、次回作の出版を楽しみに待っている。

 

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