初読みの葉室麟さんによる、シーボルト事件に題材をとった時代小説。それなりに面白く読めたけど・・・ちょっと微妙かなぁ。
※決定的なネタバレはしませんが、内容に触れますので未読の方はご注意ください。
本書を手にとったきっかけは、以前読んだこちらの書籍。江戸時代のオランダ商館長たちの日記を通して知る、江戸時代の災害についてまとめられた本である。
オランダ商館長たちは、1年に一度江戸に参府して将軍に謁見する。その時、江戸でオランダ人が定宿としていたのが、日本橋本石町にあった長崎屋である。上の書籍では、オランダ商館長たちが長崎屋を訪れる場面が何度も登場し、また火災で何度も焼け落ちては建て直されていることも記述されている。
本書「オランダ宿の娘」は、この長崎屋の娘が主人公の小説なのである。図書館でたまたまタイトルが目についたのだが、上の江戸の災害本を読んだばかりということもあって親近感があったのと、著者の葉室麟さんの書籍も一度読んでみたいと思っていたので、手に取った次第である。
本書の舞台は19世紀の文化・文政年間。水野忠邦による天保の改革よりも前である。
物語は、当時のカピタン(オランダ商館長)であるブロムホフが、青い目の青年・道富丈吉を伴って江戸参府のために長崎屋に到着する場面から始まる。丈吉は、以前のカピタンであるドゥーフと日本人遊女の間に産まれた子供であった。長崎屋には、15歳と13歳の姉妹、るんと美鶴がいた。二人は丈吉と仲良くなって共に行動するが、回船問屋で発生した殺人事件に巻き込まれてしまう。
最初は歴史小説を期待して読み始めたのだが、殺人事件が起きたあたりであれ?と思い始める。これはひょっとするとミステリーだったのかしら。ただ、探偵役が出てくるわけでもなく、謎解きがメインというわけではなさそう。
オランダ人と日本人の間に産まれた青年である丈吉と、長崎屋の娘を軸にちょっとしたロマンスになるのなか?とも思っていた。しかし、丈吉の方は序盤であっさりと殺されてしまう。
そして、長崎屋の娘の妹の方である美鶴。これがなんというかこの世のものではないものを見る力を持っている。不吉な予言をして実際その通りになったり、死んだ丈吉と交信できたりするのである。
このあたりで、私としてはちょっと冷めてしまった。もともと歴史小説を期待して読み始めていたので、霊感とはちょっと相性が悪いといいますか。別にファンタジックなものが嫌いというわけではないのだけれども、なんか唐突感があってうまく物語に入りこめなかったのである。
ただ、本書の後半、物語の主軸はシーボルト事件に移るのだけど、ここはなかなか面白かった。シーボルトの他に間宮林蔵、遠山金四郎といった有名人をうまく絡めて、シーボルト事件の意外な真相に至るのである。解説を読むとここは大部分フィクションらしいのだが、虚実を織り交ぜて充分面白い歴史サスペンスを展開している。
しかしその分、タイトルの「オランダ宿の娘」であるところのるんと美鶴の影が薄くなり、あの霊感の部分、果たして必要だったのかなぁと思ってしまった。
そんなこんなで、冒頭の通り「そこそこ面白かったけど微妙」という感想に至ったのである。まあ、これは葉室麟さんの代表作というわけではないようなので(ネットの葉室麟ランキングでも圏外のようである)機会があれば別の作品も読んでみたい。
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