青崎有吾さんのアンデッドガール・マーダーファルスの4巻目。登場人物それぞれの過去が明かされる短編集。傑作。どこを切り取っても面白い。〈鳥籠使い〉一行がますます好きになった。
※決定的なネタバレはしませんが、内容には触れるので未読の方はご注意ください。
これまでのアンデッドガール・マーダーファルスは、1,2,3巻と時系列に沿って物語が展開してきたのだが、4巻目に入って一旦過去に戻る。これまで、断片的に語られてきた〈鳥籠使い〉たちの過去が5本の短編になってまとめられている。番外編的な構成ではあるが、それぞれの短編のクォリティが高く、大いに楽しませてくれるのである。
第一話「知られぬ日本の面影」は、第一巻で語られた、輪堂鴉夜と真打津軽の出会いの直後のエピソードが語られる。このシリーズは、実在・架空ごちゃまぜでなんらかの有名人が出てくるのが常だが、この短編で登場するのは、最近NHK朝ドラ(観てません)にも出てくる小泉八雲。八雲の教え子の家で発生した幽霊事件の解決を鴉夜に依頼するという話である。有名な怪談話「むじな」の舞台である赤坂の紀伊国坂が出てくるのだが、実はこれを読む前にちょうどそのあたりを散歩したばかりだったので、不思議な縁を感じたのである。
第二話「輪る夜の彼方へ流す小笹船」は、輪堂鴉夜がまだ「フシ(不死)」の怪物になる前の14歳の頃を語る。明治30年代に960歳くらいの鴉夜が14歳の時といえば、平安時代である笑。鴉夜がフシとなった経緯が、安倍晴明のライバルである陰陽師・芦屋道満の伝説と絡めて語られるのだが、その絡め方とっても鮮やかで、最後に唸らされる。青崎さんの懐の深さに恐れ入るばかりである。
第三話「鬼人芸」は、真打津軽が半人半鬼となるまでの経緯が語られる。これがなんだか切ない話で、読んでいると涙がこぼれてくるのである。傑作ぞろいの本書の中でも一番好きなエピソードかもしれない。つが兄ぃ・・・
第四話「言の葉一匙、雪に添え」は、馳井静句が主人公。鴉夜と静句がいかにして今のような関係になったのか、そして鴉夜の体が持ち去られた時の経緯が語られる。寡黙な静句の熱い胸の内が見られる。ラストはこれまた切ない。
最後の「人魚裁判」は一転、痛快な法廷劇。十四歳の新聞記者、アニー・ケルベルと〈鳥籠使い〉の出会いとなった事件である。人間による怪物の駆除が進んでいた時代に、殺人の疑いをかけられた人魚。有罪が規定路線の「公開駆除」とも呼べる悪趣味な裁判において、人魚の弁護人として敢然と名乗りを上げたのが、われらが〈鳥籠使い〉なのであった。鴉夜が最後に勝つことはもちろん予測できるけど、ワクワクせざるを得ない設定である。スカッとしました。
本書はアンデッドガール・マーダーファルスの現時点で刊行されている中の最新刊。5巻が待ち遠しいな。Wekipediaによると、1巻から順番に2015年12月、2016年10月、2021年4月、2023年7月というペースで刊行されているようだ。2年半くらい立っているので、そろそろ出てもいい頃かも。
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