課長風月

疲れたサラリーマンの憩いのひと時

読書「ノッキンオン・ロックドドア」青崎有吾

探偵事務所を舞台とした、青崎有吾さんの連作ミステリ短編集。ゆるくて楽しい雰囲気ながら、時々さすがと思わせる。面白かった。

 

 

実はフーダニット、ハウダニットホワイダニットとかいうミステリ用語を知ったのはここ2,3年のことである。はじめは「ダニット」という言い方がなんとなく鼻についていたが、慣れてみると使ってみたくなるもので、最近は本格ミステリ作品を読むと、この事件はフーダニットがポイントだな、などと心の中で自分で分類しているのである。

 

本作は主役の探偵が二人いる。

不可能専門の探偵、御殿場倒理(ごてんばとうり)。つまり、ハウダニット専門。

不可解専門の探偵、方無氷雨(かたなしひさめ)。つまり、ホワイダニット専門。

 

二人は自分の得意分野には滅法強いが、そうじゃない方はまるでダメ。殺人事件は都合よくどちらか一方に分類されるというものでもないので、仕方なく探偵事務所を共同経営しているのである。

 

まあつまり、事件のリアリティみたいなものはそもそもあまり気にしていなくて、ミステリ好きが謎解きゲームを楽しむための作品なのである。なので、殺人事件が起きているにも関わらず、現場で「これは俺の事件だ!」などと言ってはしゃいだりして、あまり緊張感がない。このゆるい感じ、結構好きなのである。最初の短編3本くらいは、こんな感じで肩の凝らない軽いミステリーという感じであった。

 

しかしそこは天才・青崎さん。それだけでは終わらない。

 

4本目の短編「チープ・トリック」で、二人の探偵と、刑事の穿地決(うがちきまり)というレギュラーキャラに加えて、もう一人主要登場人物が出てくる。そして、この4人の関係が明らかになるのである。詳しくはネタバレになるので書かないが、ここで突然、物語にピリッと緊張感が出てくる。

そして「チープ・トリック」というロックバンドの名前とかけたきわめて簡単な(チープな)トリック。その簡潔さ故にほうっと唸らされてしまうのである。

先日観に行った寄席で、出演者の奇術師の方が、「手品というのはとにかくわかりやすくやらないとウケないんだ」とおっしゃっていた。そういう意味で、本作のトリックは極めてわかりやすく鮮やか。素晴らしい手品と言っていいのではないかと思うが、どうだろうか。

 

このシリーズは2まで出ているみたいなので、できれば年内に続きを読みたいな。でも最近、仕事がとっても忙しいのである・・・

 

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