下村敦史さんのミステリー長編。読みだしたら止まらずあっという間に読んでしまった。素直に面白かった。
2026年、1冊目の読了本は、初読み作家下村敦史さんの遺産相続をめぐるミステリーである。下村さんのお名前はたまにネット上で見かけていて、いつか読んでみたいと思っていた。昨年末、図書館に行った時にたまたま本書が目に入り、予備知識もなく借りてきたのである。
ちなみに、年末年始は家に引きこもって図書館で借りた本を読みまくるぞ~と楽しみにしていたのだが、仕事で携わっているシステムで障害が発生してしまい、正月は障害対応に追われていた。そのせいで、年明けから読めた本はこの1冊だけである。早く仕事辞めたいなぁ。
本書は「親父が死んでくれるまであと一時間半―」という印象的なプロローグで始まる。この一文だけで、語り手が父親を強く憎んでいることがわかるとともに、いったいどういう状況なのだろう?と興味を掻き立てられる。
語り手は、大崎正好という30歳の男性。父親は堂島太平という昭和の大物相場師で、際どいことをやって株で大儲けをした人物である。当然、うなるほどの資産を持っている。
太平には三人の子供がいる。長男の堂島貴彦、長女の堂島美智香、そして次男の大崎正好である。長男、長女は亡くなった先妻の子だが、次男の正好は後妻の子。兄弟仲は良くない。そして、姓が違うことでわかる通り、太平と正好の母は離婚している。裕福な暮らしをしている長男、長女に対し、次男の正好は貧しくアパートで暮らしている。正好が父親を憎むのは当たり前なのである。
しかし、長男、長女と父親の太平の仲も良くはなく、傍若無人な父親と反目しあっていた。そして二人とも事業の失敗で金に困っており、父親の遺産を狙っていた。
膵臓がんで病床にあった堂島太平は7年前、謎の失踪を遂げている。長男は裁判所に「失踪宣言」を提出した。失踪宣言の提出後、行方不明者の生死が7年間以上明らかでない場合、遺産の相続が可能となる。
そしてこの失踪宣言提出後、あと一時間半で7年が経過しようとしていた時、思わぬ事態が発生する。失踪前から残っていた、堂島太平のブログが更新されたのである。
冒頭のつかみから引き込まれ、謎めいた事件への興味から気が付くとどんどんページが進んでいる。そして、本書の面白さを増幅させているのが、長女の美智香である。失踪宣言成立の直前、ワイン片手に現れて「何?祝杯が不謹慎?」と言ってのける。徹頭徹尾、金しか頭にないイヤな奴。
偉そうにビジネス用語を乱発するが、ビジネスの才能が全くない長男もなかなか面白いが、インパクトの強さで長女に軍配を上げたい。
変に善人の側面を見せたりせず、悪役に徹する登場人物の存在が燃料となり、エンタメ性を高めているのである。
新春一冊目としてふさわしいかと言われると疑問符がつくが笑、間違いなく面白かった。正月出勤のストレス解消には役立ったかな。
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