課長風月

疲れたサラリーマンの憩いのひと時

読書「失われた貌」櫻田智也

初読み櫻田智也さんの長編ミステリー。設定はオーソドックスで派手さはないけど、とても丁寧に練り上げられた、完成度の高い警察小説だった。

 

私が積極的に趣味として読書を行うようになってから六年ほど。年季の入った読書家とは言えないけれど、読書好きです、くらいは胸を張って言えるかなと思っている。その私が本を選ぶときに基準にしている考えが一つある。それは・・・「素直に受賞作・話題作・人気作を選んどけば間違いない」というものである。

 

わざわざ披露するようなことかとお叱りを受けそうであるが、特に受賞作に関しては、プロである作家・評論家の先生方が真剣に選んでくださった作品なのだから、私としてはその果実を有難く受け取っておきたいと思っている。もちろん、合う・合わないはあるので常に自分にとっての良い作品に出合えるわけではない。でも、やはり実感として打率は高い。特に「このミステリーがすごい!」などの年末ミステリランキングの上位作品は信頼度が高く、ここ数年は毎年一位になった作品を購入している。

 

そして昨年末は本書「失われた貌」であった。作者の櫻田智也さんのことは全く存じ上げていなかったものの、「このミス」「週刊文春」「ミステリが読みたい」の三冠と聞けば期待は高まる。昨年末に早速購入して楽しみにしていたのだが、その後仕事が忙しくなってしまい、読むのが遅れてしまったのである。

 

前置きが長くなった。

 

主人公は日野幸彦、四十一歳の、J県警媛上(ひめかみ)警察署係長である。早朝、変死体発見の知らせを受けた日野は、車で媛上市内の山道にある現場に向かう。部下の入江文乃と合流した日野は、そこで道路から斜面に捨てられた死体を目にする。死体は顔がつぶされ、両腕も切断、髪も切られていた。第一発見者は、山にゴミの不法投棄に来ていた男性。日野は当初、この男性を第一容疑者と考えて捜査を進めるが、その後、隣の駒根市内のアパートで、アパート管理人の変死体が見つかったことが知らされる。そして死体が見つかった部屋の住人、八木は行方不明となっており、日野が担当した死体と身体的特徴が一致していることが判明する。

 

本書は300ページ弱と、長編小説の中では比較的短い部類に入ると思うが、物語はいくつもの要素が絡んでおり、内容は濃い。殺人事件が本筋であるのはもちろんだが、主人公日野をとりまく人間ドラマも見どころの一つである。

 

物語前半での日野の印象は、今一つ冴えない。カフェイン中毒らしくいつもコーヒーを欲しているが、一方で胃痛を抱えており、胃薬を常備している。推理も最初はあまり関係なさそうな方向をに進んでしまい、部下の入江から鋭い突っ込みを受けたりしている。また、刑事ドラマにありがちな一匹狼タイプというわけでもなさそうで、上司から言われたことには黙って従っている。そして、管轄をまたぐ二つの事件の合同捜査をする際、隣市の駒根市側に主導権を握られ、いいように使われてしまい、部下の入江から失望されてしまう。

なんか頼りないなぁ、この先どうなるのかなぁ、なんて思って読んでいるのだが、しかし中盤くらいに捜査の本流から外され、開きなおって勝手なことをやり始めてから徐々に本領を発揮しだすのである。このあたりの逆転していく感じが痛快なのである。

 

本筋の事件も、少しずつ捜査が進展し、事実が明らかになっていくにしたがってその様相を変えていく。いくつもの驚きがあり、飽きさせない。そして本書を全部読み、真相がわかってから、改めて半分ほど再読してみると、その構成の緻密さがわかる。何気なく挟まれたシーンが、ここにつながっていたんだなぁと感心してしまうのである。さすがは受賞作である。

 

 

以下は全くの余談。本書の舞台はJ県及び、隣のB県と本文中で記載される。イニシャルがJやBの県は存在しないので、架空の県ではあるが、モデルがどこかは気にはなっていた。

 

実は自分なりに推理してみて、今は当たっていることを確信しているのでここで披露したい。もし自分で当てたいという方はここで読むのをおやめください。

 

 

 

2001年宇宙への旅のIBM→HALのように、アルファベットを1文字ずらすのである

 

J県→I県

B県→A県

 

I県の北にA県があるところといえば・・・一択に絞れる。岩手県と、青森県です。

 

GoogleMapで調べてみると、岩手県には姫神山というのがあることもわかった。盛岡の北の方。ちなみに、県都で花森市というのも出てくるけど、花巻と盛岡を足して2で割ったように見える。ここまで材料がそろえばおそらく当たっていると思うんだけどな。どうだろう。

 

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