課長風月

疲れたサラリーマンの憩いのひと時

読書「紙鑑定士の事件ファイル 偽りの刃の断罪」歌田年

紙鑑定士がなぜか探偵業に挑む「紙鑑定士の事件ファイル」シリーズの第二作目。前作同様、気楽に読めて楽しめた。

 

前作「模型の家の殺人」は、主人公の紙鑑定士・渡部圭と、伝説のモデラー・土生井昇の異色コンビで謎を追う長編小説であった。

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シリーズ二作目となる本作は、三本の短編小説からなっている。今回、渡部とコンビを組むのは團文禰(だんふみね)というフィギュア作家。渡部と土生井がいいコンビだったので、今回も二人で事件解決にあたるのかと思っていたが、違っていたのである。土生井も登場するが、出番は控えめ。寂しく思うところだが、團もなかなかいいキャラで楽しめる。

 

一本目「猫と子供の円舞曲」は、小学生の女の子の依頼で猫虐待の犯人を追うもの。猫にぶつけたと思われる紙粘土のような白い塊が落ちていたことから、紙鑑定士である渡部のもとに、お小遣いの千円を握りしめて現われたのである。義憤から商売そっちのけで犯人捜しに邁進する渡部。いい人だなぁ。

 

結局、凶器は紙粘土ではなく石粉粘土とわかった。石粉粘土とは、石の粉を原料にした粘土で、フィギュアの原型制作などに使われるらしい。そこから渡部は、現場付近に拠点を構えるフィギュア作家を捜索し、土生井のつてを頼って行きついたのが團だったのである。最初は容疑者として團のもとを訪れた渡部であったが、彼のフィギュア愛にあふれた語りを聞き、なおかつ猫のフィギュアを何体も作っていることから、渡部の直観は「シロ」と告げるのであった。

 

二本目の「誰が為の英雄」はアメコミ・キャラクター。三本目の「偽りの刃の断罪」は、コスプレイヤーの世界を描く。いずれも謎の解明に、渡部の紙の専門知識と、團のフィギュア造形の専門知識がフル活用される。

 

本作の魅力はやはり、善性の専門家というか、愛すべきオタクたちの描き方にあると思う。いずれも趣味性の高い分野で物事を突き詰めた人たちの語りは(よくわからず読み飛ばしている部分も多々あるけど)、現実世界で我々が普段気にしている利害と離れたところにあり、なんとなく癒されるのであった。

 

相変わらず最近仕事が忙しすぎて疲れ気味なので、こういう本は精神にいいのである。

 

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