柴崎友香さんによる33本の短編集。平均したら1本あたり5.33ページ。1本あたりは短いけれど、独特の雰囲気で読ませる味わい深い一冊であった。
柴崎友香さんの小説を読むのはこれが2作目。少し前に読んだ「続きと始まり」が印象的だったので、もう一冊読んでみようと思って図書館で借りてきたのである。
読み始めて、まず最初に気づくのはタイトルの長さである。最初の短編のタイトルは、「一年一組一番と二組一番は、長雨の夏に渡り廊下のそばの植え込みできのこを発見し、卒業して二年後に再会したあと、十年経って、二十年経って、まだ会えていない話」・・・なのである。目次にはこういうのが33個並ぶ。小説本編の短さに比して、目次がやたら長い。
小説本編は、ほぼタイトルに沿ってストーリーが進むが、これまたページの短さに比して期間が長い。一本目の小説は、二人の女性が高校時代に出会ってから、最後は二十年の時が過ぎていく。「祖母の祖母」の話を現代につなげていくような、それこそ百年単位の話もある。
星新一のショート・ショートのような、明確なオチを持った内容ではない。最後は何ということもないところでぶつっと終わることが多い。物語自体も、何か明確な事件があるわけでなく、登場人物たちの、それほど特別とも言い切れない生活が語られる。
でも、なんだか引き込まれて、読まされるのである。語りの上手さと言ってしまうとそれまでなのかもしれないけれど、不思議なことに、読んでいて飽きることがない。「続きと始まり」を読んだときにも感じたことだが、これはずっと読んでいられるなぁという感覚。
私は一読者として楽しめればいいと思っているので、著者の意図とか、テーマとかを分析的に読み取ろうとは思わない。でも、あえて本書の全体を通じる何かを自分なりに掬い取ろうとするならば、それは「時のうつろいに対する不思議な感情」とでもいえばいいのだろうか。例えば、十年以上前に亡くなった母親の、若いころの写真を見た時の感覚に似ている。自分が知らない、あるいは忘れているけれど、確実に今につながっているはずの昔のこと。それを目の当たりにした時の、あの奇妙な、それでいて胸が詰まるような感覚を描いているような気がするのである。
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