課長風月

疲れたサラリーマンの憩いのひと時

読書「ペンギン・ハイウェイ」森見登美彦

森見登美彦さんのファンタジー小説・・・かな。少年の描き方がとても魅力的な小説であった。ただ、今一つすっきりしない部分も残るのである。

 

ペンギン・ハイウェイ

ペンギン・ハイウェイ

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森見登美彦さんの著作についてはこれまで途中挫折一冊、読了一冊である。読了した「聖なる怠け者の冒険」の感想はこちらに書いた。

karaage365.hatenablog.jp

あんまり相性よくないかも、と思いつつ、今回また手に取ってしまったのは、青崎有吾さんの「ノッキンオン・ロックドドア2」で本書について言及された箇所があったのを覚えていたからである。(確か、主人公たちが大学生のころに、ペンギン・ハイウェイの日本SF大賞受賞を祝して鍋パーティをするという描写がある)。図書館の棚にひょっこり置いてあり、思わず手に取った。

 

主人公はアオヤマ君という、小学四年生の男の子。大変ユニークな子で、冒頭から「ぼくはたいへん頭がよく、しかも努力をおこたらずに勉強するのである。だから、将来はきっとえらい人間になるだろう。」などとのたまう。ちょっと勘違いした嫌味な子かな?などと最初は思うのだが、しばらく読んでいると、彼が筋金入りの理論家で、子供にして既に学者であることがわかる。

 

彼は普段から興味を持ったことや疑問に思ったことをノートに書きつける。そして、そのことに対して自分なりに観察と考察を繰り返す。自分で見つけたいくつもの研究プロジェクトを抱えて、友達のウチダ君とともに忙しく過ごしている。

 

彼の研究プロジェクトは、川を上流に向かって辿り、その源流を見つけようという「プロジェクト・アマゾン」であったり、行きつけの歯医者さんに勤めている大好きなお姉さんについての研究だったりする。大人びた口調で理知的に研究を進めるアオヤマ君だが、研究テーマは小学生らしい。それに、やはり夜は眠くて仕方がないし、甘いものを食べて虫歯になったりする。大人びた言動と子供らしさが混在し、少々微笑ましい。でも、純粋な心で世界を探求するアオヤマ君は子供ながらもやはり尊敬すべき研究者なのである。

 

そんな彼が、行きつけの歯医者近くの空き地でペンギンの群れを見つけたことが、物語の主軸である。南極に住んでいるはずのペンギンが何故郊外の住宅街に?ペンギンは彼の研究テーマの一つになった。そしてそのペンギンは、どうやら歯科医院のお姉さんに関係しているようなのである。

 

少年小説としては、とても良かった。

 

おそらく本書の舞台は1980年代ではないかと思う。郊外にどんどん住宅街が広がっていって、子供で一杯だったころ。まあ、つまりは私の少年時代と同じころである。給水塔を目指して探検をすることとか、プールに入る前のあの冷たいシャワーのこととか。読んでいて、しばしノスタルジックな感慨に耽ってしまった。

 

また、主人公であるアオヤマ君がとても魅力的である。何があっても冷静で、決して怒ったりしないアオヤマ君。友達のウチダ君に意地悪をする同級生に対してて、きわめて理論的に堂々と立ち向かうアオヤマ君。少々人の感情に疎いところのあるアオヤマ君。読んでいてすっかりファンになってしまう。

 

ただ、本書の核心であるファンタジーの部分。ここが私的には今一つついていけなかった。詳しくはネタバレになってしまう気がするのであまり詳しく書かないけれども、そもそもなんでペンギンを出したのか?その意図がよくわからないのである。

 

ファンタジーやSFは、奇想天外な世界観を楽しむものだとは思うが、やはり虚構なりの説得力というかリアリティが必要だと思うのである。突飛な設定のものを出せばそれで面白くなるというわけではない。

 

まあ、もしかすると郊外の住宅街にペンギンがいっぱい出てくるというナンセンスを楽しむものなのかもしれないけれど、そこが私には今一つ楽しみ切れない。ただの荒唐無稽に思えて、物語に乗れなかったのである。こういうところが、自分が森見さんの作品と相性が悪いと感じるポイントなのかもしれない。

 

ラストは切なかった。少年小説としてはよかったので少し残念。森見さんの他の作品に手を伸ばすかは考え中。

 

 

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