課長風月

疲れたサラリーマンの憩いのひと時

読書「ミステリ愛。免許皆伝!メフィスト道場」平山夢明、久坂部羊、不知火京介、黒田研二、倉知淳、村崎友

講談社の文芸誌「メフィスト」編集部によるミステリ・アンソロジー。お題の縛りがあるにも関わらず、妙に振れ幅の大きい作品が集まり、楽しめた。

 

今年は、新たなお気に入り作家との出会いを求めて積極的にアンソロジーを読んでいる。本書は2010年刊行のミステリアンソロジー。平山夢明さん、久坂部羊さん、倉知淳さんは、お名前名前は知っているけれど未読。不知火京介さん、黒田研二さん、村崎友さんは、お名前を聞くのも初めてであった。

 

「一族」「ヌレギヌ」「鍵」の3つのお題で、二人の作家に競作してもらうという趣向のようだが、勝敗は書いていない。読者が好きに判断してということかな。普段、あまり作品に優劣みたいなものはつけないようにしているけれど、あえて対決フォーマットにした編集部の意図を汲んで、自分なりに勝敗をつけてみたい。

 

Round1 一族

 

・人類なんて関係ない 平山夢明

借金返済が滞った精神科医が、ヤクザに脅され、学習塾に賢い中学生をヘッドハントするよう強要されるという、うまく説明するのが難しい話 笑。暴力と残酷描写による恐怖と、奇妙なユーモアが同居して、なんとも独特な読み心地である。面白かったけどアクが強すぎてお腹いっぱい・・・

 

・祝葬 久坂部羊

55歳以上は生きられない一族に生まれた医者が本当に早逝してしまい、その謎を友人が追いかけるという話。自殺願望を持つ恋人の女性の存在など、全体的に暗いトーンだが結構好き。

 

Round1の個人的な勝者:久坂部羊

どちらも面白かったけど、落ち着いて読める方に久坂部さんの作品に軍配。もうちょっと若い時なら、平山さんの作品を選んだかもしれないが、今は胃もたれする感じである笑

 

Round2 ヌレギヌ

 

・マーキングマウス 不知火京介

SFミステリー。未来に行けるタイムマシンを完成させた大学の研究チーム。主人公の男性は研究チームの助手で、危険なタイムスリップの実験台を自ら買って出る。しかし、その魂胆はタイムマシンをつかって巧妙にアリバイを成立させた上で研究チームを皆殺しにし、成果を独り占めしようというものであった。登場人物が全員最低人間で清々しい笑。こういうの大好き。

 

・神さまの思惑 黒田研二

妻と子供と共に遊園地に遊びに来た男性が主人公。家族から離れて一休みしていると、迷子になって泣いている子供をあやす初老の男を見かける。男性は、初老の男に見覚えがあった。男性は、少年時代に自殺をしようとしたことがあった。その時、やめるように説得したのが、この初老の男性だったのである。

 

Round2の個人的な勝者:不知火京介

黒田さんの作品も心温まるよい話ではあったが、どちらが好みかと言われれば、間違いなく最低人間ばかりが集まる不知火さんの作品なんである。どちらを選ぶかで性格の善し悪しがわかりそうな、好対照な作品であった笑。

 

Round3 鍵

・Aカップの男たち 倉知淳

仕事ができて、ダンディーで、部下の尊敬を一身に集める東堂課長。部下の女性からの飲みの誘いを断り定時で仕事を上がった東堂課長の行先は、都内の個室のあるバー。そこは”同好の士”たちによるオフ会の場であった。あえてここでは書かないが、タイトルからなんとなく想像はつくと思う。脱力の展開ながら、本格的な「日常の謎」が楽しめるミステリー作品であった。

 

・鎧塚邸はなぜ軋む 村崎友

主人公は、バンド活動に勤しむ女子高校生。バンドの練習が急遽休みになって時間が空いたところ、偶然会った同級生から、伯父の家に一緒に来てくれないかと誘いを受ける。その伯父は、老齢ではあるが、名の知られた映画監督・鎧塚鉱一郎であった。友人とともに、鎧塚の豪邸でレコードをかけるなどしてひと時を過ごしていた主人公であったが、ふと居眠りをしている間に、鎧塚が殺されてしまう。本書で唯一の本格館ミステリー。楽しかった。

 

Round3の個人的な勝者:倉知淳

どちらもライトで楽しめる、好みの作品で迷ったが、より笑えた倉知さんの作品を取った。

 

対戦形式だったのであえて優劣を書いたが、6本それぞれ個性的で楽しめる作品集だったと思う。少年漫画の単行本みたいなサイズで軽く持ちやすく、電車の中とかで暇つぶしに読むのにぴったり。こういう気取らないエンタメ作品集、大好きである。

 

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