半年ぶりに鬼平犯科帳の続きを読む。安定して面白い。
前巻では、一時的に火付け盗賊改メ方の任を解かれて旅に出ていた平蔵だったが、本巻ではまた「鬼の平蔵」として大活躍をする。まあ、平蔵自体は、頭が切れて腕も立ち、昔はやんちゃしていたお陰で下情にも通じて、人情もあるので部下にも慕われ、女性にももてるという、ちょっと完璧すぎるヒーローで、私のような捻じれた心をもった人間からすると「こんなやついねえよ」なのだが、平蔵を取り巻く部下や盗賊たちが味わい深いのである。
何本か概要と感想など。
霧の七郎(なごのしちろう)
平蔵に兄を捕らえられた恨みを持つ盗賊・霧の七郎が、渋谷村・金王八幡宮境内でみかけた腕の立つ浪人に、金百両で平蔵の息子・辰蔵の殺害を持ち掛ける。しかしこの浪人、下痢に苦しんでいた辰蔵を見て、「病人を切るわけにはいかない」などと言って、わざわざおぶってやったりするのであった。
あまり優秀ではなさそうだが愛嬌のある辰蔵と、腕は立つけど変人の浪人コンビが面白い短編である。
五年目の客
元・役者で演技のうまい江口の音吉は、狙いの商店などに潜入して盗賊の手引きをする引き込み役である。東神田の旅籠丹波屋に目を付け、客を装って潜入していた音吉だが、こっそり丹波屋の女房・お吉と逢引をしているようである。しかしこのお吉、過去に音吉と因縁があるようで・・・。
盗賊たちも、お盗(つと)めの合間に公私混同というか、目的外の女遊びをしたりする。だいたいそれが致命的な失敗につながるのだが、その辺りが人間味があって面白い。
密通
平蔵の妻・久栄の伯父が、その伯父の屋敷から逃げ出した家来を、火盗改メで名を上げている平蔵に捕まえてほしいと言っているらしい。明らかに公私混同な上、伯父は家格が上であることを笠に着て高圧的な態度を採る嫌な奴。久栄は断りたかった。しかし立場の弱い久栄の父から頼み込まれ、泣く泣く平蔵にお願いする。平蔵は妻のために引き受けるが、町奉行に頼まずわざわざ私的に依頼してくることから、公にしたくない何かがあるのではないかと疑う。果たして調査を進めると、この伯父の不都合な真実が明らかになるのであった。
偉そうな伯父をギャフンと言わせるのが痛快、という作品。シンプルな構図だけど、こういうのも結構好きです。
余談。今日は昭和の日。
最近「十角館の殺人」「奇術探偵 曾我佳城」「鬼平犯科帳」と、3本立て続けで昭和の頃の男性作家の小説を読んだが、令和の今読むと、女性に怒られそうな表現が、まあ色々出てくる。懐かしくはあるけど、あのころは良かったとは思えないのだった。(作品自体は、どれも面白かったです)
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