課長風月

疲れたサラリーマンの憩いのひと時

川崎:粟津潔邸に行ってきた

5月5日、火曜日。ゴールデンウィーク真っ只中。どこに行っても混みそうなこの日、根っからの人混み嫌いの奥様が選んだ穴場スポットに行って来た。川崎市麻生区にある「粟津潔邸」である。

 

粟津潔さんは、1950年代から2000年代にかけて活躍されたグラフィックデザイナー。有名な方のようだが、恥ずかしながら今回初めてお名前を知ったのである。「粟津潔邸」は、1972年に建てられた粟津潔さんの自宅兼アトリエ。2009年にご本人が亡くなられた後、10数年を経て、2022年にご子息の粟津ケンさんにより、アートスペースとして一般公開されるようになったようだ。設計は、原広司さん。京都駅などを設計した、これまた高名な建築家の方らしいが、初めてお名前を知った次第である。ほんと無知ですみません。

 

最寄り駅は、小田急読売ランド前駅。降りるのは初めてである。駅から川に沿って少し東に歩いたのち、南に向かう。住宅街だが、なかなか勾配がきつい。歩いてだいたい20分くらいだろうか。ごくごく普通の住宅街の中に不思議な建物が見つかった。

 

こちらが入口。


入ってみるとひとけがない。しかし少し待っていたら邸の管理をされている女性と男性に出迎えられ、Paypayで二人分の入場料を支払って無事入館したのである。お客は我々だけのようである。

 

館内は美術館になっていて、この日は「中村正義と山下菊二の版画展 『二つの魂 dos almas』」という展示をやっていた。

 

普通の家は、玄関を入ったら部屋があるものだが・・・ここはいきなり階段を降りていく!斜面に沿って建てられているので、こういう構造なのだ。新感覚である。

 

屋内もやはり不思議な構造。

 

寝室、かな。奥の方に、掘りごたつ的な作り付けの机がある。

 

黒のタイルの白の目地が、なんともカッコいい。

 

ここがアトリエのようだ。3階くらい高さのある吹き抜けの解放感に、芸術センスゼロの私でも創作意欲が沸きそうだ。ワンちゃんもごろりである。

 

何枚か写真は貼ってみたけど、この建物内部の雰囲気は、やはり行ってみないと感じられないと思う。建物はすごく斬新だが、築50年ということでやはり経年を感じられる。かつての芸術家の思いが歴史になってゆく感じというのだろうか。今では住宅街の只中だが、建てた当初は周りは何もなかったそうだ。50年前、この家に暮らし、作品を作る芸術家になった気分で家の中を見回してみる。あるいは、息子としてこの家に暮らすところを想像してみる。うーん、会社員の息子にして会社員の自分にはうまく考えられない。不思議だ。

 

作品が展示されていた中村正義さんと山下菊二さんは、粟津潔さんと同時代を生きた方々。お二人とも穏やかな作風ではない。なにかどろりとした、心を波立たせるような、そんな作品であった。この邸にはすごく馴染んでいたように思う。それでいて、不思議と居心地の良さも感じる。この文章を書きながら、そういえば作品を照らす照明はなくて、全部の窓からの採光だったと思い至る。それで美術館ぽくなく、家の中に飾られたアートという感じがするのだな、と一人納得したのであった。

 

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