課長風月

疲れたサラリーマンの憩いのひと時

読書「早朝始発の殺風景」青崎有吾

「地雷グリコ」で昨年のミステリ関連の賞を総なめにした青崎有吾さんの日常の謎ミステリ短編集。ページ数も少なくさらっと読めるけど、意表を突く仕掛けが施されており、印象に残る作品だった。

 

本書は2019年刊行。各話はそれぞれ独立しているが、千葉県にある架空の市・横槍市の学校に通う高校生が主人公である点で共通している。

 

早朝始発の横槍線にたまたま乗り合わせたクラスメートの男女が、その理由を探りあって駆け引きを繰り広げる表題作をはじめとして、高校生の日常にあらわれるちょっとした謎解きを行う。

 

基本的には、高校生たちによるゆるく楽しい会話劇である。妙なことを言い出すキャラがいて、的確な突っ込みを入れるキャラがいて、和やかな笑いに包まれて話は進行する。「地雷グリコ」を読んだ時の感想でも書いたのだが、漫画のリズムに近いんじゃないかと勝手に思っている。

 

しかし、謎の真相が明らかになったときの切れ味はやっぱり鋭い。遊び半分で柔道やっていたら、突然背負い投げを喰らってしまった感じというか。さすがは平成のエラリー・クイーンである。(本書が発刊された2019年1月はまだギリギリ平成だったはず・・・)

 

全ての短編を読み通した後で改めて考えてみると、本書の謎はすべてちょっとした隠し事から来ていることに気づく。それは、冷静に考えると別に明かしてしまっても大きな問題にはならないことなのだけれど、ちょっと恥ずかしかったりとか、なんとなく言えないまま来てしまったりとか、そういった類のことである。

 

そのため、謎が解かれた後、その隠し事は友人たちにばれてしまうことになる。しかしそれが結果として、彼らの人間関係が良い方向に向かうのである。雨降って地固まるというか。このおかげで、読後感はとてもさわやかだった。

 

青崎有吾さんの作品を読むのはこれが2作目だったが、やっぱり面白かった。また別の作品も読んでみたい。

 

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