課長風月

疲れたサラリーマンの憩いのひと時

読書「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」青崎有吾

最近、お気に入りの作家、青崎有吾さんの「裏染天馬シリーズ」三作目。一言でいうと楽しかった。

 

「体育館の殺人」「水族館の殺人」と、長編ミステリが続いていた裏染天馬のシリーズだが、三作目は一回休みというか箸休め的な日常の謎解きミステリ短編集だった。読んでみると全く違和感がない。というか、そもそも高校が舞台の明るく楽しい作品には殺人事件の方が異質であって、むしろこちらの方がしっくりくるくらいである。

 

全部で短編五本+おまけ一本の構成となっている。

 

表題作の「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」は、若竹七海さんの「五十円玉二十枚の謎」をアレンジして作成したものと思われる。

と言っても、私も以前読んだ今村昌弘さんの「明智恭介の奔走」で少し言及されていたので名前を知っていたくらいで上の競作自体は読んでいないけれど。

 

兄に連れられて夏祭りを訪れた袴田柚乃は、夜店でたこ焼きを買ったところ、200円のおつりをなぜか50円玉4枚で渡される。その後、同じく祭りに来ていた裏染天馬、妹の裏染鏡華、新聞部の向坂香と行動を共にするが、かれらも夜店で渡されたお釣りがすべて50円玉であったという。気になった柚乃は、兄にもらった焼き鳥と交換で、天馬に謎解きを依頼する。

 

どうでもいい話ではあるけれど、確かに興味をそそる謎である。どうでもいいだけに、誰が何の意図でこんなことをするのかさっぱりわからないのである。私も一応考えてはみたが仮説すら思い浮かばなかった。例によって天馬によって鮮やかに解決されるのだが、結末はわかってみれば・・・という感じであった。

 

他、「体育館の殺人」で登場した不良っぽい少女、針宮理恵子が主人公となる「針宮理恵子のサードインパクト」や、天馬の妹・鏡華が主人公の「その花瓶にご注意を」など、これまで出てきたサブキャラクターにスポットライトが当たるのも、この短編集の楽しいところである。

 

特に「その花瓶にご注意を」は、緋天学園中等部での鏡華の傍若無人ぶりが明らかになりとっても楽しめる。意外すぎる人物と鏡華とのつながりも明らかになり、読者サービス満載の一本である。

 

あと、最後についているおまけの「世界一居心地の悪いサウナ」もかなり笑える。ファンなら絶対読んだ方がいいと思う。

 

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