課長風月

疲れたサラリーマンの憩いのひと時

読書「体育館の殺人」青崎有吾

青崎有吾さんのデビュー作、「体育館の殺人」を読んだ。高校が舞台の本格ミステリー。とても面白かった。

ある大雨の日、体育館のステージの幕を上げると、放送部部長の朝島友樹が殺されていた。警察による捜査の中で最初に疑われたのが、発見現場に居合わせ、明確なアリバイのない女子卓球部部長の佐川奈緒奈緒を尊敬する袴田柚乃は、どうしても奈緒が犯人とは信じられず、全校一頭が良いという噂の裏染天馬を頼る。しかしその天馬は、学校に住んでいるアニメオタクの変人であった。

 

青崎有吾さんの作品を読むのは「地雷グリコ」「早朝始発の殺風景」に次いで三作目。本作は、2012年刊行のデビュー作で、なんとこの時青崎さんは若干21歳の現役大学生。高校が舞台で、アニメ好きの探偵が出てくるなど、確かに題材の選び方は若者らしいけれど、文章や筋の運び方など稚拙に思えるところは全くない。

 

ロジックに関しては、巻末の鮎川賞選考委員のベテラン作家たちに色々ツッコまれていたけれど、素人の自分は読んでいた時は何にも気が付かず素直に推理の鮮やかさに感銘を受けた。(ちなみに、うちの奥様は読んだ後でいくつか矛盾に気づいていたようで、話を聞いてみると確かにおかしいところがある。良く読んでるなあと感心したのである)

 

明るく楽しく、読んであまりイヤな気持ちにならないのも青崎さんの作品の良いところ。本書の前に読んでいたのが、人がバンバン死ぬ米国の元特殊部隊が主人公のハードな海外小説だったので、落差がすごかった。

 

探偵の裏染天馬がことあるごとにアニメネタを挟んでくるが、残念ながらほとんどわかるものはなかった。詳しい人が読むともっと楽しめるのかもしれない。ただ、周りの人々もついていけない、という設定なので置いてけぼりになることはなく、ギャグとして楽しめた。

 

裏染天馬はシリーズもののようなので、次の作品も読んでみたい。

 

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