青崎有吾さんの裏染天馬シリーズ四作目。今度の舞台は、本好きならうれしい図書館。本作も面白かった。
時期は九月の半ば頃。風が丘高校は期末テストのシーズンである。風が丘高校は二学期制を採用しているのだ。私が高校生の頃、二学期制なんて聞いたこともなかったけれど、最近は増えてきているのだとか。物語は、この期末テストの様子と殺人事件の捜査が交互に描かれる。
事件は、夜間の図書館で発生する。殺されたのは城峰恭介、大学二年生。凶器は、山田風太郎の人間臨終図鑑。臨終図鑑で人を殺すなんて、洒落が利いているというかなんというか・・・。図書館の開架スペースで発生した殺人事件。死体のそばには、血で書かれた「く」のようなダイイングメッセージ。そして、「ラジコン刑事」というミステリ小説の表紙に描かれたキャラクターを、これまた血をつかって〇で囲んである。
図書館に出入りする電子式ナンバー錠のパスワードを知っていた五人の図書館司書たち。少し前に図書館を辞めた元司書。そして、被害者の従妹で内気な文学少女といった趣きの城峰有紗。登場人物たちの抱える秘密を、いつものように裏染が天才的な推理で解き明かしていく。
まあ、本格ミステリなのでネタバレを避けようと思うとあまり書くことがないのだけれど、証拠のみをベースにガチガチの論理で推理を積み上げていく様は、やはり青崎さんの小説の醍醐味である。ダイイングメッセージにこだわる警察に対して、「ダイイングメッセージが?重要?刑事さん寝ぼけてるですか目を覚ましてください。」と言い放つ裏染の傲岸不遜さもまた笑える。
ただ、結末については、実はちょっとしっくり来ていないというか、納得できないところもある。見落としているところがあるかもしれないので、もう少し振り返ってみるけれど。
図書館が舞台だけに、実在の本の話もたくさん出てくるし、本好きなら楽しめると思う。裏染はアニメ・漫画だけでなく小説にも詳しいのである。
なお、これが現時点で裏染天馬シリーズの最新刊である。2016年刊なので、もう9年も新作が出ていないのか。まあ、米澤穂信さんの「小市民シリーズ」も昨年、15年越しで完結編が出版されたので、本作もどこかで続編が刊行されることを期待したい。
↓よかったらクリックお願いいたします。
